日本の国はここがおかしい

将来の希望を失いつつある日本、国民が安心して生活できる国になるにはどうすればいいか

時代錯誤な自民党の家庭教育支援法

家庭での教育について国や自治体が支援の責任を負うとする「家庭教育支援法案」を、自民党が来年の通常国会に提出しようとしている。

自民党憲法改正草案の中で、「家族は互いに助け合わなければならない」として、高齢化に伴う社会保障の役割を第一義的に家族に負わす方向性を明確にしているが、今回は家庭教育を保護者の一義的責任とした上で国歌がそれに介入することを正当化しようとするものである。

 

日本国憲法においては、基本的人権の尊重がすべての基本であり、家庭教育への国家の介入は、この大原則に反するが、家庭教育支援法はその原則を変更しようとする試みである。

 

自民党は女性活躍社会を唱え、専業主婦を排除し、女性に社会で労働することを求める一方で、それ以外の残された時間で子供の家庭教育を徹底することを求めている。

 

妻が全員スーパーウーマンでないと、労働も家事も子育ても完璧にと要求する自民党の期待を満たすことは困難である。

 

未定稿の家庭教育支援法案第二条で「家庭教育は、父母その他の保護者の第一義的責任において、父母その他の保護者が子に生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めることにより、行われるものとする。」と家庭教育は父母及び保護者が第一義的に責任を負うことを強調している。

 

「2 家庭教育支援は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、社会の基礎的な集団である家族が共同生活を営む場である家庭において、父母その他の保護者が子に社会との関わりを自覚させ、子の人格形成の基礎を培い、子に国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるようにすることができるよう環境の整備を図ることを旨として行われなければならない。」
2項においては、子供に国家及び社会の形勢者としての役割を自覚させることを親の役割としている。子供が犯罪者になったり、現在の社会秩序に反する革命家になれば、それは親の責任ということになる。



第六条では「地域住民等は、基本理念にのっとり、家庭教育支援の重要性に対する関心と理解を深めるとともに、国及び地方公共団体が実施する家庭教育支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。」
と地域ぐるみで他の家の家庭教育に干渉することを求めている。そこでは基本的人権や自由よりも社会秩序を優先するという思想が明確に表れている。

 

現実は両親が子供に全責任を負えるような環境ではなく、隣に誰が住んでいるかもわからない地域住民が他家の教育にまで口出しできる環境でもない。この現実から見れば自民党の家庭教育支援法は机上の空論以外の何物でもない。

 

しかし一方で、現在の家庭を取り巻く環境を前提とした上で教育支援法の理念を実行しようとすれば、家庭や地域社会への国家の強烈な干渉が必要となる。

 

この法案が戦前社会の復活であるとの批判は的外れとして否定できない可能性がある。