厚生労働省は18日、2019年度の公的年金の受取額を18年度比で0.1%引き上げると発表した。改定率の指標となる物価と賃金の変動率はいずれもプラスだった。改定率は賃金上昇率の0.6%からマクロ経済スライドによって0.5%分の伸びを抑え、0.1%の微増にとどまった。厚生年金の受取額でみると、月額1362円増額するところがマクロ経済スライドで1135円減額された計算になる。
政府は年金財政が厳しいからマクロ経済スライドによる年金額抑制はやむを得ないと強弁しているが、そもそも年金制度を創設した当時から予想されたことてであり、金を獲るときは何も言わず、金を渡す段になってからこんな理屈で約束を違えることを詐欺という。民間なら厳しく罰せられる行為である。
政治家や官僚が誰一人責任をとらないのは政府がルールである法律を勝手に変更する権限があるからにすぎない。この意味で世の中で最も信用してはいけないのが政府である。
現在新たに厚生年金受給者となる者の平均は男性で220万円前後(月18万円前後、40年勤続し平均年収以上の生涯所得のあった者)、一方生活に必要な資金は家賃等の発生しない持ち家生活で16万円前後必要となる。
これだと何とか生活できるようだが、途中で転職したり、非正規社員の者はこれだけの年金を得られず、半数以上ま高齢者がその額を下回る。また、生活費の16万円はぎりぎり食べて生活するだけのものであり、冠婚葬祭、旅行等のレジャー、車の買い替え、病気等の費用は賄えず貯蓄の取り崩しが必要となる。
現在65歳以上の高齢者は3600万人近く存在し日本の総人口の28%以上を占めているが、2040年には3900万人を超え人口の36%を超える。
政府を無責任と批判するのは、年金財政だけに拘り支給額を減額するが。その後高齢者の生活をどうしていくのかの具体的対策が無いばかりかプランすらないからである。
現在は大学を卒業し正社員として働いてきた者はぎりぎり厚生年金で生活できる。しかし、現在でも途中転職や非正規社員として働いてきた者は年金では生活できない。
これからは非正規で働いて来た者が高齢者となり、彼らは間違いなく老後破綻する。それに加えこのままマクロ経済スライドを継続すれば2040年には厚生年金額が大幅に減少し、大学卒業後40年間働いた者でさえ生活できるだけの年金を得ることができなくなる。
そうなれば社会の混乱は避けられない。混沌と各種制度の崩壊の時代がくるだろう。
今から21年後の2040年に65歳以上に達する44歳以下の者は勿論、55歳以下の者は自力で最低2500万円程度の老後資金を蓄える以外に老後破綻を免れる道は無い。