しかし、今その熱意が冷めつつある。フランスの大統領選挙においてマクロン大統領は勝利したが、その勝利は薄氷を踏むものであった。
温暖化ガス削減政策で上昇していたエネルギー価格がロシアのウクライナ侵攻に伴う制裁で高騰し、コロナ禍による経済停滞とあいまってフランス国民の生活を圧迫しているからである。
はっきりいって何十年か後に発生する地球環境への悪影響より現在の生活がはるかに国民の関心事である。地球環境や世界平和の理想に熱中できるのは余裕のある者だけである。日々の生活におわれる者にとって、そんなものはどうでもいいことである。
EUの指導階級である豊かな層と貧困化しつつある一般国民との間には大きな意識差がうまれつつある。指導階級が理想を唱える一方で貧困化する国民は地球環境や国際社会の大義など関係なく安いエネルギーや食糧を求める。
少なくとも国民の多くが中流生活を維持できる国家でなければ、理想主義的な政策を掲げる政府は存続できなくなる。