西郷どんも後一回を残すばかりだが、当初危惧した通りやはり面白くなかった。政治的にも経済的にも社会的にも戦後最大の危機に直面している日本にとって、明治期の未曾有の危機にいかにして対応したかを知ることは大いに役にたつはずだった。
しかし、今回もNHKの視点は動乱に対する政治的な対応ではなく、偉人の家庭生活や信条をえがくことに終始した。
作家や脚本家が女性であったためか幕末明治期の混乱を解消し近代日本を築くために実施されたさまざまな政争や謀略、改革がうまり描かれていなかった。
現在日本が参考にすべきなのは、明治革命における政治的過程である。その意味でまず主人公を西郷にしたことが失敗の第一である。主人公は幕末から明治まで一貫して中心に存在し明治維新をリードした大久保にすべきであった。
西郷を主人公にし、その家庭生活や信条に時間を割きすぎた結果、近代日本を考える上で重要な様々な歴史的できごとが省略された。
岩倉使節団の欧米視察や明治6年の政変、台湾出兵と清との外交、朝鮮併合につながる江華島事件、沖縄問題につながる琉球処分などの外交問題ももっと取り上げるべきであった。
国内の改革しても廃藩置県や秩禄処分、地租改正など国民生活に甚大な影響を与えた大改革についても、それを受けた庶民の生活の変化と、何故成功したのかという視点からの描写がほしかった。
せっかく国民から金をとる公共放送が1年かけて放送するのだから、今の日本の問題の解決につながるヒントが得られるように、日本の最大の弱点である外交・政治戦略面での歴史的事実を客観視できる内容であってほしいものである。