1990年から2018年の間に社会保障費は10兆円から30兆円超まで拡大した。消費税増税後の子育て支援等を勘案すると医療、介護、子育て関連の費用は計42兆円に達する。一方で消費税を10%に引き上げても消費税収は21兆8000億円程度にとどまると予想されている。
つまり、現在の不足額を消費税で賄うとすると最低でも20%に引き上げる必要がある。しかし、一方で年々社会保障費は増加している。2018年現在75歳以上の人口は総人口の14.2%であるが、2040年には20.2%に達する(65歳以上の高齢者比率は28.1%から35.3%に増加する)ことが予想されている。
このことを勘案すれば経済成長が無いまま社会保障費の増加を消費税で賄うとすれば30%でも不足することになる。北欧諸国の消費税率は高いがそれを支払うことで生涯が補償されている。しかし、このままいけば我が国では消費税率は北欧諸国以上に高いが生活保障は自己責任という悲惨な状態に追い込まれる。
そもそも経済を低迷させたまま放置し、少子化対策や元気な高齢者の現役化対策を何もせず税率を上げるだけでこの危機を乗り切るのは不可能なのである。
1990年から2018年の間に社会保障費は10兆円から30兆円に増加したが、この間の名目GDPは453兆円から549兆円と21.1%の増加にとどまっており、GDPに対する比率は2.2%から5.4%まで増加している。この間にヨーロッパでもあまり高成長とは言えないフランスでも名目GDPは1兆ユーロから2.3兆ユーロまで2.3倍になってる。
日本がせめてフランス並みに経済成長していれば、GDPに対する社会保障費の比率は2.8%に留まっており、深刻度は相当減少していたことになる。
社会保障問題を根本的に解決するには、実効性ある少子化対策を実施し2040年に達すると予定されている高齢化比率を少しでも改善する努力を地道に続けることである。目先の対策としては既存勢力を保護する為のすべての規制を直ちに廃止し経済成長に全資源を注力すること、定年制を直ちに廃止し健康な高齢者の能力を発揮できる環境を整備することで税収増と社会保障費の減少を図るべきである。