財務省がビールの本格的な増税に向け動き始めた。
政府、与党が検討するビール類などの酒税見直し案の概要が20日、分かった。まず2018年度に税率区分の根拠となっているビールの定義を緩和する。その後、発泡酒と第三のビールを含む3区分の税率を2020年10月から3回に分けて変更し、2026年10月に55円程度へ一本化する。
この過程においては従来からの増税の常套手段が総動員されている。まずは諸外国の例をだし、ビールの税率が種類により異なるのは日本だけだと指摘している。だから是正すべきだという理屈である。
これは消費税導入及び増税時に使われた常套手段である。諸外国では消費税が定着している。だから日本でも導入すべきだ。諸外国の消費税率は日本より高い。だから日本の消費税も増税余地は十分にある等々である。
元々そのことは承知の上で発泡酒や第三のビールに低い税率を適用したのだが、増税して税収を増やすという意図を隠すために、過去の自分達の方針を無いことにし、諸外国と同様にビールの税率を一本化すべきだと主張する。
税率の一本化たけなら、低い第三のビールの税率に合わせてもいいのだが、そこは当然増税になる税率を掲げている。
さらに、増税時期は決定時点よりかなり遅らせている。名目は企業サイドの対応ができるようにということだが、実際のところは決定時点での抵抗を少なくすることにある。
消費税増税時でもそうだが、増税を決定してから実施するまでに期間を開けている。その結果増税決定時点では国民の実感がなく反対運動に直結しない。実際に増税され痛みを感じた時には、既に数年前に決定した事項だということで、今更反対運動が盛り上がらない。
今回のビール税増税もしかりである。増税が決定しても当分何の影響もない。国民が忘れた頃に増税が実施され、その時文句を言っても既に後の祭りというわけである。
このような政策は「バカな国民はのど元過ぎれば熱さを忘れる。」という国民を侮った愚民政策の現れである。
しかし、今回の増税が実施されることで、多くの企業が発泡酒や第三のビール開発に費やした多額の投資がムダになりかねない、という事実を忘れてはならない。
せっかくの企業努力が財務省側の都合で無に帰すのである。バブル崩壊後日本企業が世界で競争に負けている原因の一つは、政府の無定見な政策にある。
今回のビール税率の変更などはその典型である。