日本の国はここがおかしい

将来の希望を失いつつある日本、国民が安心して生活できる国になるにはどうすればいいか

再雇用での賃金引下げを合理的と判断した最高裁判事の浅慮

最高裁は、60歳を超えた高年齢者の雇用確保の義務付けの下で、。定年後に再雇用されて同じ仕事を続ける場合の給与や手当の一部、賞与をカットしたのは不合理ではないとした。

 

判決理由では、定年退職者には退職金が支給されたことや、厚生年金の支給を受けることが指摘されているが、本来、賃金は毎年の労働の対価であり、老後の生活保障の手段である退職金や厚生年金と相殺されるべきものではない。

 

同一労働同一賃金の原則を軽視した問題判決と言えよう。

 

勿論この判決が出た背景についても理解できる部分はある。「高年齢者雇用安定法」の再改正(2013年施行)で企業は希望者全員の再雇用を義務付けられることになった。

 

高齢者の仕事能力のばらつきは、他の年齢層よりも大きく、無能な高齢者の再雇用を義務づけられた企業としては、賃下げしないと労働コストが増すばかりであることは理解できる。

 

しかし、その場合は別の仕事につけるべきであり、定年前と同じ仕事に従事させながら、賃金だけ下げるということを正当化するものではない。

 

そもそも、高齢化の進行している日本では高齢者の有効活用が不可欠である。高齢者であっても、有能であれば会社内で責任あるポストに就かせるのが妥当である。しかし、画一的な非正規社員としての再雇用では、それができないし、賃下げしていたのでは労働意欲を損ないその能力を活用できない。

 

同一労働同一賃金の原則を守り、有能な高齢者を有効活用し日本の活力を維持するという国益の為にも最高裁は同一労働の場合の賃金引下げを違法とすべきであった。

 

また、この裁判では60歳に達したことだけで解雇される定年退職制度の社会的妥当性を問うべきであった。これは多くの先進国では、仕事能力に差のない労働者を、一定の年齢に達しただけで解雇する定年退職制を、人種や性別による解雇と同様な「年齢による差別」として原則禁止しているためである。