かってのような家族に囲まれての死は多くの高齢者にとっては夢物語になりつつある。これは子供のいない高齢者だけでなく子供がいる高齢者にとっても家族に囲まれての死は難しくなっている。
今の日本社会においては子供のいない単身者か増加していることもあるが、子供がいたとしても近くに住める世帯もまた少なくなっている。
勤労者が普通の日本社会においては親子が近くに住むことは難しく、多くの高齢者は夫婦または一人で生活している。
高齢になり夫婦の片方が死んだとしても、残された親が子供を頼ることは難しくなっている。30年にも及ぶ日本経済の停滞の中で子供世帯に親の面倒を見るだけの経済的余裕がない場合が多いからである。
親が要介護になった時点で問題は表面化する。親が金をもっていればなんとかなるが、親に金がない場合子供が親の面倒を見るのは経済的にも体力的にも難しいからである。
単身世帯だと問題はより深刻である。親の面倒を見る為に仕事をやめざるを得ないケースも多く見られる。その場合共倒れになることが多い。
一方で親との関係を断つケースもみられる。居宅介護事業者によると、「家族がいても遠方の場合などは、金銭管理や緊急の連絡先はお願いしても、それ以外の大部分は介護サービスで担うことになる。また、電話もとってくれず、亡くなった時だけ連絡してくださいと言われることもある。」
居宅介護事業者を利用できる高齢者は死んでも何とかそう日がたたない内に発見されることが多いが、利用できない多くの高齢者は結果的に死後相当の日数を経て発見されることになる。
今後も一人暮らしの高齢者は増加し続けることが予想されており、地域社会の中に高齢者を見守る為の組織を整備しない限り、今後は日本では死後何か月も発見されない孤独死が普通の死に方になるだろう。